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親等(しんとう)とは?相続における重要な概念を完全解説

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遺産相続で「自分は相続人になれるのか」「相続順位はどうなるのか」といった疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。これらの判断に欠かせないのが「親等(しんとう)」という考え方です。

親等とは、血族関係の距離を表す法律上の単位です。たとえば、親子は1親等、祖父母や兄弟姉妹は2親等というように、関係の近さを数字で表します。この親等の数え方を理解することで、以下のような重要な判断ができるようになります:

✓ 法定相続人になれるかどうか ✓ 相続の順位や相続分はいくらか ✓ 遺留分を請求できるかどうか

本記事では、相続に関わる親等の基礎知識から実践的な計算方法、さらには具体的な事例まで、図解を交えてわかりやすく解説します。「親等って何?」という方から、実際の相続手続きで確認が必要な方まで、この記事を読めば親等に関する疑問が解消されるはずです。

目次

1. はじめに

親等(しんとう)とは、民法で定められた血族関係の距離を表す単位です。具体的には、自分を起点として、直系血族(自分の先祖や子孫)の場合は世代の数を、傍系血族(兄弟姉妹やいとこなど)の場合は共通の先祖から数えた世代の合計を指します(民法第725条)。

なぜ親等が重要なのか

相続の場面において、親等は以下の3つの重要な役割を持っています。

  1. 法定相続人の確定
    • 相続順位の決定(民法第887条)
    • 相続権の有無の判断基準
  2. 相続分の算定
    • 法定相続分の決定(民法第900条)
    • 代襲相続の範囲確定
  3. 遺留分の算定
    • 遺留分権利者の確定(民法第1042条)
    • 遺留分の割合決定

法律上の意義

民法では、親等関係が以下の場面で具体的な効果をもたらします:

  • 扶養義務の範囲(民法第877条):特に3親等内の親族間
  • 後見人の選任(民法第843条):4親等内の親族が候補者
  • 親族会の構成(民法第945条):3親等内の親族が中心

2. 親等の数え方

親等は、自分を起点として以下の2つの方法で数えます。

直系血族の場合

自分から見て上または下の世代を数え、1世代につき1親等とします。

  • 父母:1親等
  • 祖父母:2親等
  • 曾祖父母:3親等
  • 子:1親等
  • 孫:2親等

傍系血族の場合

自分から共通の先祖までさかのぼり、そこから目的の人までの世代を数えた合計が親等となります。

おじ・おば:3親等(自分→父母[1]+父母→祖父母[1]+祖父母→おじ・おば[1]=3)

兄弟姉妹:2親等(自分→父母[1]+父母→兄弟姉妹[1]=2)

3. 重要な親等関係

1親等の関係者

以下の直系血族が1親等に該当します:

  1. 父母(尊属)
    • 実父母
    • 養父母(特別養子縁組の場合)
  2. 子(卑属)
    • 実子
    • 養子(特別養子縁組を含む)

※1親等の関係者は、民法第889条により第一順位の相続人となります。

2親等の関係者

以下の親族が2親等に該当します:

  1. 直系尊属
    • 祖父母(父方・母方とも)
  2. 直系卑属
    • 孫(息子・娘の子)
  3. 傍系親族
    • 兄弟姉妹(同父同母、半血兄弟姉妹とも)

※兄弟姉妹は、民法第889条により第三順位の相続人となります。

3親等の関係者

以下の親族が3親等に該当します:

  1. 直系尊属
    • 曾祖父母(父方・母方とも)
  2. 傍系親族
    • おじ・おば(父母の兄弟姉妹)
    • 甥・姪(兄弟姉妹の子)

※3親等の親族は、特別な場合を除き、原則として法定相続人とはなりません。

4親等の関係者

以下の親族が4親等に該当します:

  1. 傍系親族
    • いとこ(おじ・おばの子)
    • 大おじ・大おば(祖父母の兄弟姉妹)

法的効果の範囲

親等関係は、以下の法的効果に直接影響します:

  1. 相続権の有無
    • 1親等:常に相続権あり
    • 2親等:条件付きで相続権あり
    • 3親等以上:原則として相続権なし
  2. 扶養義務の範囲
    • 3親等内の親族に限り、生活保持義務または生活扶助義務が発生(民法第877条)
  3. 親族関係の届出
    • 3親等内の親族に限り、出生や死亡の届出が可能(戸籍法第60条)

4. 相続における親等の重要性

法定相続人の順位

法定相続人の順位は、民法第887条から第890条に基づき、以下のように決まります。

  1. 第一順位:子(1親等)
  • 子が複数いる場合は均等に分割
  • 子が死亡している場合は孫が代襲相続
  • 養子も実子と同様の権利を持ちます
  1. 第二順位:配偶者と直系尊属(1・2親等)
  • 父母(1親等)
  • 祖父母(2親等)
  • 父母が死亡している場合のみ祖父母が相続人となります
  1. 第三順位:配偶者と兄弟姉妹(2親等)
  • 全血兄弟姉妹と半血兄弟姉妹では相続分が異なります
  • 兄弟姉妹が死亡している場合は甥・姪が代襲相続

法定相続分の具体例

以下の表で、主要なケースにおける法定相続分を示します:

相続人の構成法定相続分根拠条文
配偶者と子配偶者1/2、子1/2民法第900条1号
配偶者と父母配偶者2/3、父母1/3民法第900条2号
配偶者と兄弟姉妹配偶者3/4、兄弟姉妹1/4民法第900条3号

実際の相続事例と計算例

具体例1:父が死亡した場合

相続人:母、子2人
遺産総額:3,000万円

計算:
- 母(配偶者):1,500万円(1/2)
- 子A:750万円(1/4)
- 子B:750万円(1/4)

具体例2:代襲相続が発生するケース

相続人:配偶者、死亡した子Aの子2人(孫)、生存している子B
遺産総額:4,000万円

計算:
- 配偶者:2,000万円(1/2)
- 孫2人で:1,000万円(1/4)
  - 孫A:500万円(1/8)
  - 孫B:500万円(1/8)
- 子B:1,000万円(1/4)

親等が相続に与える影響

遺留分への影響

遺留分とは、相続で保証される最低限の取り分を指します。親等により、遺留分の割合は以下のように定められています。

  • 直系尊属(1親等・2親等):遺産の 1/3
  • 配偶者:遺産の 1/2
  • 子(1親等):遺産の 1/2
  • 兄弟姉妹(2親等):遺留分の権利はありません

相続放棄への影響

相続人が相続放棄を行った場合、相続権は次順位の相続人に移ります。また、代襲相続が発生する際は、相続放棄をした人の子が相続権を得ます(民法第939条)。これにより、相続権の継承に変動が生じ、家族内の相続関係が再構成されます。

相続税の計算への影響

親等関係は相続税の控除にも影響します。たとえば、未成年者控除や障害者控除は親等に応じて控除額や適用範囲が異なります。近親者であるほど控除の対象となりやすく、法定相続人としての位置付けが控除額の決定に重要です。

5. よくある疑問と回答

養子縁組の場合の親等関係

1. 普通養子縁組の場合

実方(実親)との親等関係
  • 実父母との1親等関係は継続します
  • 実父母の親(実方の祖父母)との2親等関係も継続
  • 実方のきょうだいとの2親等関係も変わりません
  • 相続権も実方・養方の双方に対して存続します
養方(養親)との親等関係
新たに発生する関係:
- 養親との間に1親等の親子関係
- 養親の父母(養方の祖父母)との2親等関係
- 養親のきょうだいとの3親等関係
- 養親の実子との2親等の兄弟姉妹関係

2. 特別養子縁組の場合

実方との関係の終了
  • 実父母との1親等関係が終了
  • 実方の親族との親等関係もすべて終了
  • 戸籍から実親との記載が消除
  • 相続権も消滅します
養方との新たな関係
発生する関係:
- 養親との完全な1親等の親子関係
- 養親の親族全員と実子同様の親等関係
- 戸籍上は実子として記載
- 完全な法定相続権の取得

離婚・再婚の場合の親等関係

1. 離婚した場合の変化

元配偶者との関係
  • 婚姻関係の解消により、法的な関係は終了
  • 姻族関係も原則として終了
  • ただし、子がいる場合は子を通じた関係は継続
元配偶者の親族との関係
関係の変化:
1. 元義父母(姻族1親等)との関係 → 終了
2. 元義兄弟(姻族2親等)との関係 → 終了
3. 子がいる場合の例外:
   - 子の祖父母としての関係は継続
   - 親権・面会交流に関する調整が必要

2. 再婚した場合の新たな関係

新たな配偶者との関係
発生する関係:
1. 法的な夫婦関係の発生
2. 新たな姻族関係の発生
   - 新配偶者の父母 → 姻族1親等
   - 新配偶者の兄弟姉妹 → 姻族2親等
   - 新配偶者の子 → 継子(特別な法的関係)
子どもの立場での変化
  1. 実親との関係
  • 親権者である実親との1親等関係は継続
  • 非親権者である実親との1親等関係も法的には継続
  1. 継親との関係
  • 継親との間に姻族1親等の関係が発生
  • 養子縁組をしない限り、相続権は発生しない
  • 継親の連れ子との間に姻族2親等の関係が発生

特殊なケースへの対応

1. 代襲相続における親等計算

具体例:
被相続人(祖父)→ 死亡した子A → 孫B(代襲相続人)の場合

1. 通常の親等計算
   - 孫Bは被相続人から見て2親等

2. 代襲相続における扱い
   - 死亡した子A(1親等)の地位を承継
   - 相続順位は1親等相続人として扱う
   - 相続分は死亡した親が受けるはずだった割合

2. 認知された子の親等関係

認知前の状態
母方との関係:
- 母との1親等関係が存在
- 母方の祖父母との2親等関係あり
- 母方のきょうだいとの2親等関係あり

父方との関係:
- 法的な親族関係は存在しない
- 相続権も発生していない
認知後の変化
新たに発生する関係:
1. 父との1親等関係
2. 父方の親族との関係
   - 父方の祖父母:2親等
   - 父のきょうだい:3親等
   - 異母兄弟姉妹:2親等
3. 相続権の発生
   - 認知の効力は出生時まで遡る
   - 相続分は嫡出子と同じ

これらの関係変更は、戸籍の記載にも反映され、法的な権利義務関係に大きな影響を与えます。特に相続や扶養義務の面で重要となりますので、正確な親等関係の把握が必要です。

6. まとめ

親等計算の重要ポイント

1. 基本的な計算方法

  • 直系:世代の数を数える(例:親=1親等、祖父母=2親等)
  • 傍系:共通の先祖からの世代を合計(例:兄弟=2親等)
  • 最短の経路で計算(複数経路がある場合は近い方を採用)

2. 実務での確認事項

基本チェックリスト:
□ 戸籍謄本による親族関係の確認
□ 法定相続人の順位確定
□ 代襲相続の可能性チェック
□ 各相続人の相続分計算
□ 遺留分保有者の確認と算定

相続手続きで注意すべきこと

1. 事前準備

  • 相続人全員の戸籍謄本取得
    • 出生から死亡までの連続した戸籍
    • 除籍謄本の確認
    • 改製原戸籍の確認
  • 相続関係説明図の作成
    • 被相続人を起点とした関係図
    • 各相続人の親等明記
    • 相続分の記載

2. 手続き開始時の確認事項

  • 相続人の範囲確定
    • 法定相続人の特定
    • 相続欠格事由の確認
  • 相続分の計算
    • 法定相続分の確認
    • 代襲相続分の計算
  • 期限管理
    • 相続放棄:3ヶ月以内
    • 遺産分割:できるだけ早期に

3. 遺産分割時の注意点

  • 遺留分の考慮
    • 遺留分算定の基礎財産の確認
    • 遺留分侵害額の計算
  • 代襲相続の確認
    • 代襲原因の確認
    • 代襲者の特定
  • 特別受益・寄与分の確認
    • 生前贈与の把握
    • 相続人の寄与度評価

専門家への相談

1. 相談が必要なケース

  • 相続人に海外在住者がいる場合
  • 養子縁組関係者がいる場合
  • 相続人間で争いがある場合
  • 相続財産が高額な場合

2. 専門家別の相談内容

専門家相談内容相談のタイミング
弁護士法的助言、争続対応争いが予想される時点
税理士相続税申告、節税対策相続開始直後
司法書士不動産登記、各種届出遺産分割協議後

3. 準備すべき書類

  • 戸籍関係書類一式
    • 戸籍謄本(出生から死亡まで)
    • 除籍謄本
    • 改製原戸籍
  • 財産関係書類
    • 財産目録
    • 預貯金通帳のコピー
    • 不動産登記簿謄本
  • その他重要書類
    • 相続関係説明図
    • 遺言書(ある場合)
    • 生前贈与の記録

7. 関連する法律知識

民法での規定

  1. 親族関係の規定(民法第725条)
  • 六親等内の血族
  • 配偶者
  • 三親等内の姻族
  1. 重要条文と解説
   第725条:親族の範囲
   第726条:配偶者の姻族関係
   第727条:姻族関係の終了
   第887条:相続人の範囲
   第889条:相続順位
   第900条:法定相続分

戸籍との関係

  1. 戸籍の見方
  • 本籍地の確認
  • 筆頭者と関係性
  • 親族関係の連続性
  1. 必要な戸籍書類 書類名 取得目的 請求場所 戸籍謄本 現在の親族関係確認 本籍地市区町村 除籍謄本 過去の親族関係確認 本籍地市区町村 改製原戸籍 昭和改製前の確認 本籍地市区町村
  2. 戸籍から確認できる事項
  • 出生・死亡の記録
  • 婚姻・離婚の履歴
  • 養子縁組の経緯
  • 親族関係の変遷

不動産取引における連帯保証人について

賃貸借契約においても、連帯保証人を求められるケースがあります。

連帯保証人の条件として「収入のある3親等以内の家族」とされることも多く、「親等」について理解しておく必要があります。

下記の記事では、賃貸借契約における「連帯保証人」の条件について解説しています。

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この記事を書いた人

住まい会議編集部
合同会社LEOSENSE|岐阜県知事(1)第5251号
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