相続と空き家をめぐる現実
なぜ“実家=空き家”が急増しているのか
まず押さえておきたいのが、この国全体で「空き家」が劇的に増えている現実です。
直近の全国調査によると、住宅全体に占める空き家率は 約13.8% — 過去最高水準 になっています。
また、空き家の総戸数はおよそ 900万戸 にのぼり(2018年時点849万戸 → 2023年時点約900万戸)、5年間で50万戸以上増加している、という状況です。
この「空き家の急増」は、単に「住む人が少ない」「新築ばかり増える」といった住宅市場の偏りだけでは説明できません。背後には、人口構造の変化――少子高齢化、都市への人口移動、そして「相続」というライフイベントの増加――が複雑に絡んでいます。
空き家の約6割は「相続」が原因――最新調査で明らかに
直近の 国土交通省(以下、国交省)による「令和6年空き家所有者実態調査」では、空き家の“取得経緯”に関する最新データが示されました。そこでは、空き家の約6割が「相続」によって取得されたもの であることが明らかになっています。
さらに、そのうち 7割超 が「1980年代以前に建てられた住宅」であり、築年数が古く、老朽化しているケースが多いという特徴があります。
また「死亡」をきっかけに住まなくなったという回答が約6割を占め、「転居」「施設入居」といった理由はそれに続きます。
この数字が示すのは、「使い続けられてきた実家が、世代交代をきっかけに“誰の住み家でもなくなる”――つまり空き家化する流れ」が社会において非常にありふれたものになっている、という現実です。
なぜ“相続=空き家”になりやすいのか
この背景には、いくつか典型的な構造があります:
- 相続前に「どのようにするか」の話し合いや準備がされていない家庭が多い。実際、調査では「相続前の対策を講じた」世帯は 2割強 にとどまり、約8割が何もしていなかった、という回答となっています。
- その結果、相続後に「とりあえずそのまま」にされ、管理されないまま放置される空き家が増えている。放置された空き家は腐朽・破損・管理不全のリスクを抱えやすく、売却や活用のハードルも高くなります。
このように、親世代・子世代の双方にとって“空き家の放置”は決して対岸の話ではなく、「気づいたときには問題になっていた」という典型的なパターンなのです。
地域差にみる「空き家の温床」――郊外・過疎地、そして高齢化地域
日本全国の空き家の増加傾向は大きなトレンドですが、特に顕著なのは「人口減少」「高齢化」「都市から離れた地域」にある空き家率の増加です。こうした地域では、不動産の流動性が低く、一度空き家になると売れにくい、貸しにくい、活用しにくいという傾向があります。
実際、ある自治体レベルの調査では、「所有者不明空き家」「相続放棄による放置」「利活用が進まない空き家」が年々増えている、という報告があります。
この構造は、「郊外の戸建て実家を持つ高齢世帯が、そのまま亡くなる」→「子どもが相続」→「住まない・売れない・管理しづらい」→「空き家放置」の典型パターンにつながっています。しかし、地元でずっと暮らしてきた親世代にとっては「手放す=損」という感覚や愛着もあるため、すんなり売却や処分に踏み切れないのが実情です。
この結果として、人口減・高齢化が進む地域では、不動産の“価値の劣化”と“管理リスクの増大”が同時に進んでいます。
⚠ なお、所有者不明空き家や放置空き家の増加は、地域の防災・治安・景観といった社会問題にもつながります。故に、国や自治体だけでなく、所有者自身や家族がどう向き合うかが問われています。
若年層の都市部流入――親と子の“住む場所のズレ”が空き家を生む
空き家問題の背景にあるもうひとつの大きな構造は、「人口の都市集中」、特に若年〜働き盛り世代の都市部流入です。戦後から続く地方から都市への人口移動、そして近年の少子高齢化・地方過疎化によって、都市部への人口シフトは加速しています。
これにより、子世代が都市部(たとえば名古屋市や岐阜市など)に住み、仕事・子育てをする一方で、親世代は郊外の実家にそのまま暮らし続ける――。そのような “親子の住む場所のズレ” が、将来的に「誰も住まない実家=空き家」をつくりやすい構造になっているわけです。
言い換えれば、単なる「親の老後」「子の独立」に伴う住み替えではなく、「ライフステージの分断」が、空き家問題の根底にある──そう考えると、この問題は“個人の事情”ではなく“社会構造の変化”そのもの、ということになります。
1-4 なぜ“古い戸建て”と“相続”は相性が悪いのか――管理負担と流動性の低さ
前述のとおり、相続で空き家になりやすいのは「1980年代以前に建てられた古い戸建て」が中心。では、なぜこうした“古い戸建て”が特に空き家化しやすいのか――そこには、いくつかの“現実問題”があります。
管理負担とメンテナンスの問題
古くなった戸建ては、屋根・外壁・配管・断熱・設備といった多くの部分で劣化が進みがちです。放置すると“腐朽”“雨漏り”“シロアリ被害”などのリスクが高まり、維持コストだけでなく安全性の不安も出てきます。特に定期的な点検や修繕をするには手間も費用もかかり、それを負担するのは現実的でない場合も多いのです。
土地や建物の“流動性の低さ”
古い戸建ては、間取りや構造の古さ、設備の陳腐化から、売却や賃貸に出してもなかなか買い手や借り手がつきにくい傾向があります。特に、郊外や交通の便が悪い地域ではその傾向が強くなります。さらに、若い世代が都心近くを好む現在では、郊外の“古い実家”は資産というより“持て余す負担”になりやすいのです。
解体・処分のコストと手間の増大
古い戸建てをそのまま維持するのが難しいなら「解体して更地に」――という選択肢もありますが、解体費用や土地の整備費用、廃材処理など、経済的・手続き的なハードルは高い。しかも、古家+広い敷地がある場合、“固定資産税などの維持コスト”も無視できません。
このように、「古い戸建て」と「相続」は、空き家化しやすい構造的な条件を重ね合わせてしまう――。だからこそ、「実家=戸建て」という選択肢を次世代につなぎたくても、現実は難しい。こうした事情が、空き家問題の根底にあるのです。
ポイント整理
- 日本全体の空き家率は約13.8%、空き家数は約900万戸で過去最多。
- 最新の国交省調査では、空き家の約6割が「相続」による取得。さらに、その多くが古い戸建てで、築年数が古く、老朽化のリスクが高い。
- 地域的に、郊外・過疎地・高齢化地域では流動性が低く、相続後に空き家のまま放置されやすい構造がある。
- 子世代の都市部への流入と、親世代の郊外居住という“住む場所のズレ”が、空き家を生みやすい構造をつくっている。
- 古い戸建ては維持・管理・処分のいずれもハードルが高く、結果として“放置されやすい資産”になってしまう。
節税目的で「都心マンション住み替え」はもう通用しない?
――最新制度から読み解く“本当の理由”
日本では、2010 年代に「都心マンション(特にタワマン)に住み替えると相続税が節税できる」という考え方が広く浸透しました。
しかし現在、この“節税としての住み替え”は ほぼ通用しない と言ってよい状況です。
理由は明確で、
(1)マンション評価額の見直し(2024年〜)
(2)相続税で効くのは“結局どの住宅でも同じ”小規模宅地の特例だけ
(3)節税よりも「生前整理」「負担軽減」へ社会の価値観が変わった
この3つが揃ってしまったからです。
では、順番に深掘りしていきます。
タワマン節税は制度改正で終わった
2024年以降、評価方法が見直され「節税スキーム」として成立しにくくなった
かつてタワーマンションは、
実勢価格(時価)>> 固定資産税評価額・相続税評価額
という“乖離”が大きく、
同じ5,000万円の物件でも 相続税評価額が3,000万円以下 といったケースも珍しくありませんでした。
しかし国税庁は 2024 年から評価基準を改正し、
高層階ほど評価額を高くする方式 を導入。
これにより、「高額階を買って評価を低く抑える」という節税ロジックは実質的に封じられました。
さらに、マンション全体の評価についても、実勢価格との乖離を縮小する方向で調整が行われ、
“タワマン節税”と呼ばれた手法は、今の市場では成り立たない
と言って良い状況です。
都心マンションは資産価値の上昇が先行し、そもそも節税メリットが消えた
名古屋市・東京都心などでは、
新築マンション価格がこの10年で 1.5〜2倍近く上昇しています。
市場価格が高くなれば評価額も上がるため、
もはや「都心マンション=評価額が割安」という状況はありません。
結論:節税目的で都心マンションに住み替える時代は完全に終わった。
結局もっとも効く節税制度は「小規模宅地等の特例」
郊外戸建ても都心マンションも“同じ”330㎡の枠
相続税の世界で、もっとも大きな効果を持つ制度は
「小規模宅地等の特例」 です。
これは、
- 自宅の土地 → 最大 330㎡まで評価額80%減
という制度。
ここで重要なのは、郊外戸建てでも、名古屋市のマンションでも扱いが同じという点です。
たとえば、
- 名古屋市の 70㎡のマンション
- 郊外の 200㎡の戸建て
いずれも、「自宅」であれば 330㎡以内に収まってしまう。
つまり、“節税だけ”を見るなら、住み替えの場所による差はほとんどないという結論になります。
築古戸建ては「敷地が広すぎて特例対象外」になりやすい
ここで一点、注意すべきポイントがあります。
郊外の家は「200㎡〜400㎡以上」というケースが珍しくありません。
敷地が 330㎡を超える部分は特例対象外となり、
その超過分が相続税評価額にそのまま乗ってきます。
つまり、
- 庭が広い
- 二世帯を想定した大きな土地
- 角地で余剰地が広い
こうした土地は、マンションよりむしろ不利になることがあります。
より正確に言えば、郊外戸建ての方が“節税としては扱いづらい”。
2-3 ではなぜ今「住み替え」を選ぶ親子が増えているのか
ここがもっとも重要な論点です。
結論から言えば、節税目的の住み替えではなく、“生前整理・流動性確保・家族負担の軽減”が理由の中心に変わったからです。
最新の行政調査でも、シニア世帯の住み替え理由として「老後の生活利便性」「家族への負担軽減」が上位にあり、“税金対策”を理由とする割合は極端に低い状況が確認されています。
理由①:郊外戸建ては「相続後の管理」が圧倒的に重い
草刈り・防犯対策・換気・台風後の点検…。
住まない家を管理するのは、想像以上に負担です。
特に名古屋市・岐阜市に住む子どもにとって、岐阜県の郊外や中山間地域にある「実家の管理」は物理的に難しく、結果として 放置 → 価値低下 → 売れにくくなる → 空き家化の負のサイクルが発生しやすい。
理由②:実家は「資産」より「負債」になるケースが増えている
人口減の進む地域では、築古戸建ては“相続しても価値がつきにくい”のが現実。
流動性が低く、「売れるうちに売っておく」選択が強く意識され始めています。
理由③:都心マンションは“出口が読みやすい資産”
名古屋市中心部や岐阜市駅近のマンションは、
- 売却
- 賃貸
- 子どもの将来利用
など、複数の出口が残されます。
郊外戸建てとは真逆で、「持っていても困らない資産」になりやすい。
「節税目的で「都心マンション住み替え」はもう通用しない?」まとめ
- 2024年の評価見直しで “タワマン節税” はほぼ消滅
- 節税で本当に効くのは「小規模宅地等の特例」=どこに住んでも同じ330㎡枠
- 郊外戸建ての方が“敷地が広すぎて不利”なケースすらある
- 現代の住み替え理由は“節税”ではなく老後の利便性/家族の負担軽減/相続後の管理リスク回避
- 都心のマンションは将来の出口戦略が立てやすい
“生前整理としての住み替え”が選ばれる理由
――親世代・子世代それぞれのリアルから考える
第2章で整理したとおり、「節税目的の住み替え」は時代遅れになりました。
それでもなお、近年は 親世代の自発的な住み替え がじわじわと増えています。
理由はただひとつ。
“相続してから困るのではなく、相続する前に負担を減らしたい”
という、親世代・子世代の“本音”が揃いつつあるからです。
名古屋市や岐阜市での相談でも、まさにこの傾向が顕著です。
“売れるうちに売っておく”という発想
郊外戸建ての流動性は、年々確実に落ちている
まず押さえておきたいのは、郊外戸建ての“流通スピード”は年々鈍くなっているという現実です。
不動産流通統計(成約期間データ)を見ると、
- 名古屋市中心部のマンション:売却まで平均 1〜2か月
- 名古屋市郊外戸建て:3〜5か月
- 岐阜県郊外や中山間地域:半年〜1年以上というケースも
という傾向がはっきり出ています。
岐阜県では特に、駅距離・生活利便性・高齢化率 の3要素がそろうと流動性が大きく低下します。
“売れるうちに売る”は、立派な老後戦略
親世代からすると、
「今の家はわが家の歴史そのもの。売るなんて寂しい」
という気持ちは当然あります。
しかし、一度空き家になって市場価値が落ちてしまうと、
売却・活用どちらも難しくなる のは不動産の常。
プロの間ではよく、
「家は“使っているうち”がいちばん価値がある」
と言われます。
相続後に“子が困る”展開を避けるためにも、まだ家の状態が良く、売却意欲のあるうちに動くことには合理性があります。
解体費の高騰が「判断遅れ」のリスクを押し上げる
郊外戸建ての出口戦略として重要なのが、解体費の上昇 です。
解体費はこの10年で
- 木造:平均 100〜150万円 → 現在は200〜300万円程度へ上昇
- RC造などは 300〜500万円台も
というのが実務感覚です。
理由は、
- 人件費・職人不足
- 廃材処理費の上昇
- 法規制強化(飛散防止・アスベスト調査義務化など)
古くなってから解体をすると、建物の破損・アスベスト含有の可能性 によって費用が跳ね上がりやすい。
つまり、“判断を後回しにするほどコストが増える”という悪循環が生まれやすいのです。
子どもの生活圏と合わせるメリット
親が都市部に住むだけで、介護・通院・見守りの負担が激減する
親が70代に入り、子が40〜50代になると、物理的に「距離」が問題になり始めます。
特に、
- 名古屋市:子世代の就業率が高く、共働きが多い
- 岐阜市:医療・行政サービスが集約しており、親世代の通院動線が短縮
この“都市部の利便性”は、親の老後だけでなく、子の負担軽減にも大きく効いてきます。
●名古屋・岐阜市に住み替えると何が変わる?
実際の相談でよく出る声はこんな感じです:
- 「通院の付き添いが“車で40分” → “徒歩 or バス10分”になった」
- 「親が駅近に住むと、週末の“顔出しハードル”が劇的に下がる」
- 「認知症の初期症状に気づけたのは、近くに住んだから」
つまり、親の生活圏と子の生活圏を“同じ都市”に揃えるだけで、家族全体の余裕が明らかに増えるのです。
介護が必要になる前の住み替えが、もっとも負担が少ない
介護が始まってから住み替えると、
- 手続きの煩雑さ
- 本人の体力低下
- 新居への適応ストレス
が重なり、実行が非常に難しくなります。
体力・判断力が十分ある 60〜70代前半が“ベストタイミング”とも考えられます。
“資産を分けやすくする”という合理性
戸建ては「分けられない」。マンション+現金は「分けやすい」。
相続の現場で非常に多いのが、「戸建て1軒を兄弟姉妹でどう分けるか問題」 です。
郊外戸建ての多くは、
- 土地が広い
- 建物が古い
- 需要が限定的
であるため、売却しても高値になりにくい。
すると、
- 兄弟の誰かが住むのか?
- 誰も住まないなら売るのか?
- 売っても大きな額にならず、不公平感が出る
というトラブルになりやすいのです。
都心マンションは「現金化しやすく、公平に分けやすい」
名古屋市・岐阜市中心部のマンションは、
- 流通量が安定
- 査定価格にブレが少ない
- 即時売却・賃貸がしやすい
つまり、相続後の処理がラク。
結果として、“マンション+一定の現金”の形にしておく方が、遺産分割が圧倒的にスムーズというケースが本当に増えています。
都市部マンションは「出口(売却・賃貸)」の選択肢が広い
名古屋市・岐阜市は“地方都市の中では例外的に”流動性が高い
都市部マンションが人気の理由は、「出口戦略」が立てやすいこの一点に尽きます。
実際の市場データでも、
- 名古屋市中心部(中区・東区・千種区・中村区)
- 岐阜市の駅徒歩圏(JR岐阜・名鉄岐阜)
ここは中古マンションの成約件数が安定しており、売却期間も比較的短い。
賃貸需要も一定あり、「貸して家賃を得る」「売却して整理する」どちらも取りやすい。
これは、将来を予測しやすい“安定資産”という意味で、親子の安心につながります。
“生前整理としての住み替え”が選ばれる理由 まとめ
- 郊外戸建ては“売れるうちに売る”判断が重要
- 解体費は上昇傾向で、古くなるほどコストが増える
- 親が都市部に住むことは、介護・通院・見守りの負担を大きく減らす
- 戸建ては相続で「分けにくい」、マンションは「分けやすい」
- 名古屋市・岐阜市の中心部マンションは“出口が読みやすい資産”
岐阜県 → 岐阜市、愛知県 → 名古屋市で考える住み替えの現実
――地域データから見る「どこへ住むと、どんな未来が手に入るのか」
岐阜市マンション市場の特徴
まずは岐阜県の中心都市、岐阜市。
郊外から岐阜市への住み替え相談は年々増えています。
岐阜市のマンション市場には、次のような“安定性を支える要素”があります。
① 駅近の資産性が高く、相続後の出口(売却・賃貸)が読みやすい
岐阜市は「JR岐阜駅・名鉄岐阜駅」を中心に、行政・商業・医療が集約しています。
- 駅徒歩10分圏の中古マンションは成約期間が比較的短い
- 単身者〜シニアまで居住ニーズが幅広い
- 県外(名古屋で働く)需要も一定ある
郊外の戸建てとは対照的に、“相続しても困らない” という声が多いエリアです。
② 岐阜市は「医療・行政アクセス」の強さが高齢世帯に向いている
高齢になるほど重要になるのが 医療の近さ と 移動のしやすさ。
岐阜市はこの2条件がそろいやすく、「郊外から移ったら生活がラクになった」という実感が出やすい地域です。
- 病院が駅近に集まっている
- 中心部のバス網が密で移動が楽
- 介護サービスの選択肢が多い
③ なぜ岐阜市中心部は“価格が大きく下がりにくい”のか
人口規模だけ見れば岐阜県は減少傾向にあります。
ところが、岐阜市中心部のマンションは相対的に値崩れしにくい。
理由はシンプルで、岐阜県内で「徒歩10分圏×駅近」の供給が元々少ないためです。
需要>供給 になりやすく、築10〜15年でも売却しやすい市場 ができています。
名古屋市マンション市場の“圧倒的な強さ”
住み替え先として圧倒的な人気を誇るのが 名古屋市。
特に中区・東区・千種区・中村区(名駅圏)などは東海エリアの価格牽引地です。
① 新築マンション価格はこの10年で 1.5倍
名古屋市のマンション価格は、
- 再開発
- リニア整備計画
- 企業集積
- 若年層の流入増
を背景に、長期的に上昇基調 にあります。
年収帯が高い若い共働き層に支えられ、中古マンションの需要も非常に厚い。
② “名駅・栄・金山” は東海圏で最も出口が強い
住み替え後の「将来の選択肢」を考えるなら、名古屋市ほど分かりやすい市場はありません。
- 売却 → 過去の取引データが豊富で価格が読みやすい
- 賃貸 → 単身〜DINKSまで層が厚い
- 将来の子の利用 → 勤務地が名駅圏の可能性が高い
つまり、“出口の読みやすさ”=資産の安心感として機能するわけです。
③ シニア層が名古屋市を選ぶ理由
相談の中で特に増えている声がこちら。
- 「車を手放したい」
- 「通院が近く、歩ける範囲で生活したい」
- 「雪の日でも生活動線が止まらない」
- 「スーパー・病院・駅が全部徒歩圏にある」
つまり、「運転しなくても生活できる都市」という価値が、シニア世帯から強く支持されています。
岐阜郊外 vs 岐阜市/愛知郊外 vs 名古屋市
――住み替えの“違い”を4つの軸で比べる
ここでは実際の相談で最も喜ばれる「比較表」を文章で整理しておきます。
① 市場性・流動性
- 岐阜郊外・愛知郊外の戸建て
- 買い手は限定的
- 売却期間が長くなりやすい
- 築20年超は価格下落が早い
- 岐阜市・名古屋市のマンション
- 過去の成約データが豊富で価格予測しやすい
- 賃貸需要も安定
- 相続後の「処理」がラク
② 管理コスト
- 郊外戸建て:草刈り、雨どい、屋根・外壁の劣化
- マンション:管理費・修繕積立金は必要だが、“外回りの負担ゼロ”
→ 高齢世帯では「自分で管理できる範囲か」が重要。
もちろん、マンションにも老朽化が進むと非常に大きな問題が出てきますが、ここでは比較的築浅のマンションへの住み替えを想定しています。
③ 相続後の負担
- 戸建て:分けられない・売りにくい・管理負担が重い
- マンション:価値が分かりやすく、分けやすい・売却しやすい
④ 生活利便性・医療アクセス
- 郊外:車前提。高齢化が進むと生活が難しくなる
- 都市部:徒歩圏で生活できる。医療が近い。バス・電車で移動可能
住み替えが“向くケース・向かないケース”
住まい会議が大切にしているのは、「誰にでも都心マンションが正解」ではない、という姿勢。
以下、実務の現場で見えてきたリアルな分類です。
住み替えが“向く”ケース
- 土地が200〜400㎡以上の戸建て
- 築30年以上・痛みが目立つ
- 近隣も高齢化しており、将来の市場性に不安
- 子どもが地元ではなく都心に住んでいる
- 親が車を手放したい/通院が増えた
- 相続人が複数で、分け方に不安がある
住み替えが“向かない”ケース
- 親が「戸建てでの生活」を強く望む
- すでに駅近・利便性が高い戸建てに住んでいる
- 子どもが同居予定
- 売却しなくても維持できる資金余力がある
岐阜県 → 岐阜市、愛知県 → 名古屋市で考える住み替えの現実 まとめ
- 岐阜市は「徒歩圏×医療×行政集約」で、高齢世帯の生活と資産の安定が両立
- 名古屋市は“出口の強さ”が圧倒的。資産価値が読みやすく、子も使いやすい
- 郊外戸建てと都市部マンションは「市場性」「相続後の負担」で大きく差が出る
- 住み替えは“向くケース・向かないケース”を冷静に整理することが大切
住み替えの実務ステップ
――親子で“失敗しない準備”をどう進めるか
「都市部マンションへの住み替え」が現実的な選択肢になる背景を整理しました。
ここからは、実際の準備をどう始めるか がテーマです。
- 何から手をつけるべき?
- いくらかかる?
- 親とどう話せばいい?
- 売却と購入、どっちを先に?
こうした疑問が一つずつ解決できるよう、 “迷わない手順書” としてまとめます。
まず「実家の資産性」を客観評価する
ステップ1:土地の“価値の基準”を押さえる
資産性の判断は、「感覚」ではなく「数字」で見るのが鉄則です。
最低限チェックすべき項目は以下の5つ。
- 路線価(相続税評価の基準)
- 固定資産税評価額(毎年の維持コスト)
- 土地面積(330㎡を超えるかどうか)
- 接道状況(再建築不可の可能性)
- 最寄り駅・バス停との距離
特に郊外では「土地が広いほど有利」という昔の価値観が残っていますが、都市部との比較では、“広い=売れにくい・管理しにくい”に変わっています。
ステップ2:建物の状態を“定性的”に評価する
築30年以上で、以下のような症状があれば、売却時に減額要因になりやすい項目です。
- 外壁のクラック(ひび割れ)
- 屋根の色あせ・浮き
- 水回り(風呂・キッチン)の設備劣化
- 配管の老朽化
- シロアリ履歴の有無
- 駐車場が停めづらい(並列2台不可など)
これらを 「直すべきか」「現状で渡すか」 の判断材料にします。
ステップ3:近隣の成約価格を調べる
不動産の市場価値は、「近くの物件がいくらで売れたか」でほぼ決まります。調査方法は以下の通り。
- 不動産ポータルの 成約事例 表示を活用
- 同じ学区・駅距離・築年の戸建てをチェック
- 直近1〜2年で売れた物件を中心に見る
- 土地サイズが近い物件の価格を参考にする
岐阜県の場合、少し場所が変わるだけで 価格が1.5倍以上違う ケースも珍しくありません。
ステップ4:信頼できる不動産会社を見つける
査定は最低でも2〜3社に依頼。
特に岐阜・愛知はエリア特性がはっきりしているため、
- 岐阜市中心部
- 名古屋市中心部
- 郊外(本巣・羽島・春日井など)
それぞれで実績のある会社を選ぶのが効率的です。
住み替え先は「市場性の高い場所」を選ぶ
住み替え成功の”核心”がここ。
都市部ならどこでも良いわけではありません。「将来の出口を確保できる場所」 を選ぶことが、親子ともに安心につながります。
■ 岐阜市で市場性が高いエリア
- JR岐阜駅徒歩10分圏
- 名鉄岐阜駅 徒歩圏
- 柳ヶ瀬の再整備周辺で利便性が高いライン
- 近隣に医療・買い物施設が密集しているエリア
岐阜市の場合、駅から離れるごとにマンション市場の流動性が大きく変わるため、
「徒歩圏」かどうかは資産性に直結します。
■ 名古屋市で市場性が高いエリア
- 名駅(中村区):資産性トップ
- 栄・矢場町(中区):利便性が圧倒的
- 金山(熱田区):交通結節点として安定需要
- 千種区(東山線沿線):落ち着きと利便性のバランス
- 桜通線沿線(丸の内〜久屋大通〜今池)
名古屋市は「路線×徒歩圏」で価値が大きく分かれます。特に 東山線・桜通線 は資産性が高く、シニア人気も強い。
住み替え先を選ぶときの基準(共通項)
- 徒歩圏で生活できる(スーパー・病院・駅)
- 人口が増えている or 減り幅が小さい地域
- 中古マンションの成約件数が多い
- 賃貸需要が安定している
- 再開発計画がある(名駅・栄など)
これらはすべて、“相続後に困らない”という最終目的につながる項目です。
住み替えの資金計画
住み替えで失敗しないために重要なのが、
「売却 → 購入」の順番 と 資金計画の見える化。
■ 売却と購入、どっちが先?
住まい会議の推奨は、原則:売却 → 購入です。
理由は3つあります。
- いくらで売れるか確定してから買えば、資金不足が起きない
- 二重ローン・二重生活費のリスクを避けられる
- シニアローンは支払い能力の審査がシビア。先に“現金化”しておくのが安全
ただし、譲渡益課税や住替え特例を使う場合など、購入先行が有利なケースもあります。
リフォーム vs リノベーション
シニア住み替えで人気なのは 軽いリフォーム。
- 浴室の段差解消
- 手すり設置
- 入口の幅拡張
- クロス貼り替え
- キッチン入れ替え
「新築同様に」は不要で、安全性+生活のしやすさ が最優先。
■ シニアでも組める住宅ローンの現実
70代でもローンは組めますが、ポイントは “年金収入で返せるか”。
- 返済期間は短め(5〜15年)
- 団信に加入できないケースあり
- 金利はやや高め
- 子が連帯保証 or 親子リレーになることも
ただし、都市部マンションは資産性が高いため、売却前提で短期ローン を組むケースも割とあります。
親子で話すべき3つのポイント
住み替えで最も難しいのは「親子の合意形成」です。
しかし話すべきことは、実はたった3つに整理できます。
①「誰がどこに住むか」
- 親はこれからどの地域で暮らしたいのか
- 子は将来どこで生活している見込みか
- 同居・別居の可能性を含めて話す
“距離”の問題は介護フェーズに直結します。
②「将来の管理・売却は誰が担当するか」
- 鍵は誰が持つ?
- 草刈り・換気・冬場の点検は誰?
- 売却時の手続きは誰が中心になる?
実家の管理は、曖昧にすると必ず揉めます。
最初の段階で“役割を決める”ことが未来の負担を大きく減らします。
③「相続の分け方をどう考えるか」
戸建ては分けにくい。
マンションは分けやすい。
この前提で、
- どの資産を誰が持つのか
- 現金と不動産の割合をどうするか
- 遺言を作るか
を決めておくとトラブルを避けられます。
住み替えの実務ステップ まとめ
- 実家の資産性は「路線価・築年数・接道・駅距離」で客観評価する
- 住み替え先は“将来の出口”を見据えて「駅徒歩圏×利便性」で選ぶ
- 売却→購入が基本。シニアローンは組めるが慎重に
- 親子は「住む場所」「管理」「相続」の3点だけ共有すれば迷いが減る
節税のためではなく、“家族の未来のための住まい選び”へ
――郊外の実家問題は、親世代の決断で「次の世代の悩み」を消すことができる
長く丁寧にお読みいただいた方は、すでにお気づきかもしれません。
本記事で繰り返し出てきたキーワードは、「節税」ではなく「負担を軽くする」 でした。
家をどうするかは、税金の計算だけでは整理できないほど、親の人生、子の生活、家族の距離感、地域の事情が複雑に絡みます。
そして今の日本では、
- 人口減少
- 高齢化
- 都市への人口偏在
- 古い戸建ての老朽化
- 空き家の増加
が同時進行で進んでおり、「実家をどうするか」は、もはや“誰も避けられないテーマ”になりました。
◆ 親の住み替えは、“家族への最後のプレゼント”になりうる
親世代からすると、「住み慣れた家を手放す」ことは簡単ではありません。
でも、だからこそ、“自分が元気なうちに、自分で選ぶ” という価値が大きくなっています。
子世代がいちばん困るのは、親が亡くなったあとに
- 住まない戸建てが残る
- 管理に行けない
- 売れない
- 解体費が高騰している
こうした状況が一度に押し寄せること。
逆に、親が元気なうちに
- 郊外の戸建てを「売れるうち」に売り
- 都市部の“生活しやすい住まい”へ移る
この選択をしてくれた家庭では、親も子も「ラクになった」と口をそろえて言います。
◆ 都心マンションの住み替えは、“正解”ではなく“選択肢”
住まい会議として強調したいのは、「都心マンションに住み替えることこそ正解」と押しつける意図は一切ないということです。
重要なのは、
- 郊外戸建ての出口がどれだけ確保されているか
- 親子の生活圏がどれだけ近づくか
- 親自身の生活がどれだけ“ラク”になるか
- 子世代の負担がどれだけ減るか
これらの観点で、家族が納得できる選択肢を“自分たちで選べる”状態をつくること。
その選択肢のひとつに「岐阜市や名古屋市のマンション住み替え」が入る、というだけです。
郊外の実家問題は、“親世代の決断”で解消できる
実家の扱いで家族が大変になるのは、たった一つの理由です。
「決める人が決められないまま、時間が過ぎてしまう」 から。
逆に、親が
- 売る
- 住み替える
- リフォームして住み続ける
- 賃貸に出す
- 更地に戻す
いずれかを「自分で決める」だけで、子世代はほとんどの負担から解放されます。
親子で話し合える時間は、意外と限られています。
将来の不安を押し殺すよりも、“今のうちに整理しておく”方が、家族全員の幸せにつながる。
それが、このテーマを取材し続けてきた私たちの実感です。
◆ 最後に:親子で対話するための“3つの質問”
この章を読み終えたら、ノートやスマホに、ぜひ次の質問を書き留めてください。
これが、実家問題の出発点になります。
- 「親はこれから、どこで暮らしたい?」
- 「実家は、将来だれが管理・処分する?」
- 「相続はどう分けると家族が気持ちよくいられる?」
この三つを話し合えば、実家問題の“詰まり”はきっと解決に向かうでしょう。

